ハイラックスサーフ物語

〜車のある風景〜

 

「美穂ぉ、いーかげんにあんな彼のことなんか忘れちゃいなさいよ」

半ば呆れ顔で、幼なじみのありさが言う。

何があってもいつも前向きなありさ。

いつまでたっても立ち直る気配のない私を見るに見かねて

ありさとその彼氏がドライブに連れてってくれる。

しかも、私の知らない男の人も連れてくるらしい。

ありさはニヤニヤしながら言う。

「美穂も絶対に気に入るってばぁ」

そうはいうけどねぇ、余計なお世話だよ…。

 

 

 

前の彼とはこの夏に別れた。

約3年間続いた彼との恋愛もあっけなく幕を閉じてしまった。

何をするにもいつも一緒だった彼。

どこに行くにもいつも一緒だった彼。

別れた理由もハッキリしないまま、一人になってしまった。

あぁ、なんでだろう。

思い出すたびに3年分の溜息がでてしまう。

彼のサーフの助手席は、私だけのものだったのに…。

気が進まないよー、と駄々をこねる私を無視して

ありさは彼の携帯に電話して、まだぁ?などと話している。

会話の内容からもうすぐここに着くようだ。

「何かね、彼が連れてくるその人も美穂に早く会いたいって言ってるらしいよ。楽しみだねぇ。」

あーもうなんでもいいよ。

帰りたい。

 

 

 

「ほら、来た来た、美穂、来たよ!」

やっぱり、彼じゃないといやだぁ。

「はい、笑顔、笑顔!」

いやだぁー。

次の瞬間、私たちの前に現れたのは、見覚えのあるハイラックス・サーフだった。

「え?」

助手席から降りて無邪気に「お待たせぇ」と手を挙げるありさの彼。

その運転席には、別れたはずの彼が乗っていた。

訳が分からないまま立っている私と、なかなかドアを開けてでてこない彼。

「ほら、美穂」

ありさのその一言にふと我に返った私は泣くことしか出来なかった。

その数時間後には、4人は何事もなかったのようにドライブにでていた。

こんなに心から笑ったのは久しぶりだ。

きっと彼もそうに違いない。・・・・・そして、ありさも。

ありさには、帰ったら改めて礼を言わなきゃ。

そして、もうサーフの助手席は誰にも渡さないように努力しますと。

 

 

 

おわり